世界に類例のないビッグデータで健康革命! 岩木の健康診断と弘前大学COIについて

いきいき健診写真
いきいき健診が行われている様子

いきいき健診が行われている様子
いきいき健診が行われている様子

青森県弘前市では6月7日~13日の7日間、岩木文化センターにおいて地域住民の健康診断「いきいき健診」が行われた。健康診断と聞くとどこでも行われているいたって普通の取り組みに聞こえるが,実はこの健診には世界の健康をリードしていくための大きな意味があるのだ。


平成28年「いきいき健診」の概要

青森県は現在,著しい速度で高齢化が進んでおり,また人々の平均寿命が日本で一番短いいわゆる「短命県」として知られている。医療や健康に関して多くの問題に直面している青森県。しかし青森県弘前市にある弘前大学ではこのピンチをチャンスに変えるある取り組みが行われている。「寿命革命」をテーマとし,健康づくりのはたらきかけを全国,アジア,そして世界へと広げていこうという取り組み,弘前大学COI(COI:革新的イノベーション創出プログラム)だ。

弘前大学COIとは?-ビッグデータを用いた”疾患予測法”と”予防法”の開発-

弘前大学は短命県返上のために2005年に「岩木健康増進プロジェクト」を立ち上げ,旧岩木町において11年間にわたって住民の大規模な健康診断を行ってきた。この健診の最大の特徴は,約600項目という世界に例のない膨大な検査項目を設けることで,巨大な健康ビッグデータを記録し,それらを同じ人から11年間継続して記録,蓄積してきたということである。これらの取り組みによって2013年に文部科学省からCOIの12の拠点のひとつに弘前大学が採択され,現在弘前大学COIは産業部門・地方自治体と一体となって「産・学・官の連携」のもと,健康づくりのための活動を行っている。先日行われた健康診断は,65歳以上の高齢者を対象として今年から始まった,認知症に関する弘前大学COIの新しいコホート研究である。この健診においても同様に,頭のてっぺんから足の先までカバーする約600項目に及ぶ検査項目が設けられた。

平成28年「岩木健康増進プロジェクト」の概要

それでは,約600項目に及ぶビッグデータと長期間にわたる健診の継続実施によって何がわかるのだろうか。まず,600項目の中からいくつかの指標に相関を見出すことで,例えば「握力の低下と認知症との関連」「残存歯数の減少と認知症との関連」といった将来病気の予防に役立つかもしれない多くの可能性が得られることだ。通常であれば認知症の患者は認知症の治療のために医療機関を訪れるのであって,その他の認知症とは一見無関係に見える種々の検査項目を調べることは難しく,このビッグデータによって示される可能性は非常に価値のあるものである。また得られたビッグデータは,AI(人工知能)に応用することで健康づくりのための様々なツールを生み出すこともできる。

弘前大学COIの目指すべき将来像:健康ビッグデータと最新科学がもたらす”健康長寿社会”

いきいき健診は10年間隔年で受診することを前提として来年も受診者を募集する。受診は無料であり,その上健診を受けたその場で結果についてのレクチャーが受けられる。弘前市に住む65歳以上の方々には,自分をはじめとして青森県,そして世界中の人々が健康に生きるきっかけとなるこの健診を是非受けていただきたい。

弘前大学COIホームページ

http://coi.hirosaki-u.ac.jp/web/

文部科学省COIホームページ

http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/coi/