【主催者に聞く】さくらまつりの舞台裏と弘前公園の魅力を深堀り!桜以外に何がある?見どころも解説


近年どんどんその人気が高まりつつある『弘前さくらまつり』。今回は、さくらまつりの主催団体のひとつである弘前市 観光部 観光課 誘客推進係長の天内敬子さんに直接お話を伺い、その舞台裏に迫っていく。そして、弘前公園・弘前城が持つ魅力を再発見していこう。

弘前さくらまつりが人気であることは周知の事実であろうが、実際どのくらい人が来ているのか、まずは見ていく。
さくらまつり人出の推移
上の画像は2016年から2019年までのさくらまつりの人出の推移を表したグラフだ。年々、人出は増えており、人気の高まりを実感できるだろう。2016年でも230万人以上の人出があったが、2019年には約290万人ほどの人出となっている。
これはさっぽろ雪まつり(約273万人、2019年)を超えるレベルであり、同年の東京モーターショーへの来場者が約130万人、コミックマーケット(通称:コミケ)の来場者が約75万人程度であることを考えると、この数値のすごさが実感できるはずだ。日本人がいかに桜を愛しているかがよくわかる。

ただ、桜の名所は決して弘前公園だけではない。では、なぜ弘前さくらまつりがこんなにも多くの人を集めるのだろうか。

桜守(さくらもり)や樹木医の方々による丁寧な手入れによるものではないか」

そう天内さんは分析する。桜守の方々が年中通して懇切丁寧に手入れすることにより、花の付き方が大きく変わってくるのだ。弘前公園の桜守の方々の技術力は極めて高く、「弘前公園の桜の寿命は無い」とまで言うほどである。実際、現存する中で日本最古とされるソメイヨシノも弘前公園に存在し、それを保全する桜守の方々の技術力の高さを窺い知ることができる。
加えて、盛況を呈する出店(でみせ)も魅力的だ。出店の数は例年200近くにまで上る。

 

さくらまつりの舞台裏と今後

さくらまつりの運営や各種企画を行う際には、主催4団体――弘前市、弘前商工会議所、弘前観光コンベンション協会、弘前市物産協会――で協議し、安全にできるか、安心してできるかを精査する。けがをしてしまったりして、嫌に気持ちになってしまわないよう、安全――例えば動線確保――などには細心の注意を払う。来る人が楽しんで帰ってもらえるように、「安全で安心なまつりづくり」を第一に心掛けているそうだ。
かつて東日本大震災があった年、つまり2011年、さくらまつりを実行するか否かで揺れた後、実行を決定した。しかし、想定以上の人が来てしまい、賀田(よしだ)坂付近が混雑し、少し危険な状態であったという。そこで、翌年から、いかに安全に通行させるかの訓練を行っている。この訓練は現在でも行われており、こういった地道な努力により我々来場者が、安心して楽しむことができているわけである。

このように年々進化するさくらまつり。現在、新型コロナウイルスの感染が拡大しているが、今後、どう変容していくのだろうか。まだまだ模索中ではあるとは前置きをしたうえで、こう語ってくれた。
当然ながら、手指の消毒などは引き続き行っていく。また、出店を出している方々も、PayPay(ペイペイ、キャッシュレス決済のひとつ)などを利用可能にし、現金での受け渡しを減らすことで感染リスクを抑える自助努力もなされている。新型コロナウイルスの影響で、観光の形も変わっていくかもしれない。時代の変化に合わせて模索していく。――と。

 

桜だけじゃない!弘前公園の魅力

天内さん曰く、「弘前さくらまつりは有名にはなっている。しかし、まだまだ魅力を全ては伝えきれていない」とストイックだ。

桜の時期以外にも是非足を運んでほしいと語る。例えば、秋の「桜の紅葉」なども魅力的だ。他の地域では紅葉を迎える前に散ってしまうことも多いので、桜が紅葉しているのを見ることができるのは珍しい。弘前の冷涼な気候によるところもあるが、やはり桜守の方々の手入れによる力も大きいだろう。
そして、さくらまつりを契機に、弘前城、ひいては弘前のまちにも興味を持ってほしいと語る。歴史的建造物は勿論、前川建築* など弘前のまち歩きを楽しんでほしいとのことだ。
※前川建築:建築家・前川國男氏が手掛けた建物のこと。

「さくらまつりが弘前を好きになってくれるきっかけになれば」

そう語ってくれた。

弘前市役所前川本館
↑ 弘前市庁舎本館(市役所 前川本館)。前川建築の代表例だ。

桜の時期以外でも、弘前公園は多くの表情を見せてくれるし、桜以外にも多くの魅力がある。最後にそれらを見ていこう。

今回お話を伺った天内さんのおすすめスポットは植物園。少しマイナーな場所であるが、共通入園券で入ることができるため、植物園にも足を運んでほしいと語る。桜の季節は、濠の両側に咲く桜のような圧巻さこそ無いものの、多くの種類の桜をじっくりと、落ち着いて堪能することができる。また、新緑に茂るブナ林もひじょうに魅力的。当然郊外に行けばブナ林を見ることもできるが、こんな街中で見ることができる場所というのはそう多くない。隠れた名所である。

筆者のおすすめはやはり「遺構」。現存する遺構は往時の姿を思い出させてくれる。
その最たる例が天守だ。弘前城は東北地方で唯一の現存天守を持つ城であり、現存する天守は全国を見渡してもたったの12個しかない。下の写真は城外側から撮影したもの。多くの狭間(さま、小窓のように見える部分)や切妻破風(きりつまはふ、三角形の形をした部分)が配置され、優美・優雅な印象を与える。

弘前城の天守
↑ 城外側から撮影した天守。煌びやかな印象を与える。

一方で城内側から天守を見ると、採光のため連子窓(れんじまど)が採用されており、一つひとつの窓も大きいことがわかる。このように、城外側と城内側で意匠が違うのが他の城の天守には見られない大きな特徴。少しマニアックな知識だが、知っていると楽しんで見ることができるかもしれない。

弘前城天守を城内側から撮影した写真
↑ 城内側から撮影した天守。朗らかな印象を与える。

天守はさらに、季節によってさまざまな顔を見せてくれる。下の画像は冬に、雪燈篭とセットで天守を撮影したもの。雪とのコントラストが美しい。

雪燈篭と弘前城天守

現存する遺構は天守だけでない。天守以外にも、櫓や城門など9棟が国の重要文化財に登録されているのだ。門のうち、城の正面玄関となる追手門(おおてもん)も立派なもの。城の創建時は搦手門(からめてもん、裏門の意味)として使用されていたが、参勤交代のルート変更に伴い、追手門(表門)に改められ、現在に至る。この追手門、他の城の追手門(大手門と書く場合も)と比べて

1階部分が特に高い

という特徴を持つ。これは実は積雪を考慮した結果。積雪時でも、槍を掲げたまま門を通れるように設計されており、まさに雪国ならではの工夫といえる。

弘前城の追手門
↑追手門。城の正面玄関としての威厳を感じさせる。

また、馬出(うまだし)と呼ばれる、敵を迎撃するために、城外に築かれた陣地が今なおよく残っているのも実は弘前城の隠れた見どころ。近世城郭では、ほとんどが壊され現存しないのだが、ここ弘前城ではよく残っている。城の南の防備を固めつつ、天守を見せつけるような構造になっている。弘前公園に足を運ぶ際はぜひ注意して見てみてほしい。

他にも、「二の丸辰巳(たつみ)櫓」「二の丸未申(ひつじさる)櫓」「二の丸丑寅(うしとら)櫓」といった櫓、「二の丸南門」「二の丸東門」「三の丸東門」「北の郭亀甲門(きっこうもん)」といった城門も今なお現存する。往時に思いを馳せながら巡るのも良いだろう。

弘前城二の丸南門
↑ 二の丸南門。歴史を感じさせる佇まいだ。


▮Link

弘前市公式サイト:観光情報についての公式発表が掲載されています。
http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kanko/

弘前市観光コンベンション協会公式サイト
https://www.hirosaki-kanko.or.jp/web/index.html

弘前公園総合情報:株式会社コンシスが運営する、弘前公園に関する情報が豊富にまとまったサイトです。
https://www.hirosakipark.jp/


▮Access

弘前公園(弘前城)
◆所在地:青森県弘前市下白銀町1
◆弘南鉄道大鰐線 中央弘前駅 から徒歩約20分
※弘南鉄道の時刻表はこちら


▮Contact

弘前市 観光部 観光課
TEL☎ 0172-35-1128
所在地 青森県弘前市大字上白銀町1-1 市役所 前川新館5階