現在、若者を中心に世界的な人気を誇るボーカロイドキャラクターである『初音ミク』、そんな彼女から派生し、春を象徴するキャラクターが『桜ミク』である。
その桜ミクが2019年から弘前市とのコラボが実現し、弘前市の各地で見られるようになった。すると、弘前市の観光客が明らかに増えたというのだ。
一体どういうことなのか?そして、どのようにここまで来たのか取材した。
弘前市✖️桜ミクの経緯は?
このコラボの経緯と効果について探るべく、実行委員長である、弘前コンベンション協会 事務局長 白戸大吾氏(以下、敬称略)にお話を伺った。
白戸「初音ミクを企画・開発したクリプトン・フューチャー・メディア社(以下、K社)の”斉藤大輔氏”(大学時代を弘前で過ごし、弘前の魅力を知っていた)と私の共通の知人が、斉藤氏がコラボをしたいと思っているという旨を教えてくれたんです。」
当時、青森県を訪れる観光客は全体の8割以上が40代以上の年代で占めており、若年層に対する誘客対策の実施を必要としており、若年層に絶大な人気を誇る『初音ミク』とのコラボの話は”若者を誘致できる”のではないか、と思い、
さらに、K社としても弘前市とコラボすることによって、『初音ミク』に比べて知名度が低い”『桜ミク』というキャラクターを知ってもらう”良い機会なのではないか、という両者にメリットがある話だったという。
実際、今回のコラボによる経済効果はあったのか?
今回のコラボでは様々なスタンプラリーや装飾、コンテストをはじめとしたイベント、グッズの販売(弘前市現地での先行販売)などが行われたが、どのような効果があったのか伺った。
白戸「2019年(コロナ流行前)にコラボイベントが開催され始めましたが、この年における”弘前さくらまつり”では人出(主催者発表)が289万人で、”前年比35万人増”ということになりました。これは過去2番目に多い記録です。」
白戸「この増加には若年層の方々が多く見受けられたため、今回のコラボには効果があったのではないかというふうにみています。」
グッズに関しても、弘前市内の6ヶ所で販売したところ、いずれも売り上げは好調だったため、効果はあったと考えられるそうだ。
また、この他にも、市内の交通機関(タクシーや電車の車体にラッピング)とのコラボ取り組みがなされており、それらは白戸氏が各機関に呼びかけを行い実現したという。特に、タクシーに関しては「桜ミクタクシーでお願いします。」と予約することでラッピング車両に乗ることができる。
※現在、電車に関してはラッピング車両は無いとのこと。
弘前さくらまつりを皮切りに様々な試みを行う
2019年の弘前さくらまつりが成功に終わった後も、白戸氏は止まらなかったという。
その年の弘前市での夏のビッグイベントである”弘前ねぷたまつり”にも許可をとるなどコラボの幅を広げることになり、ねぷたを制作する各団体が工夫をこらす『ねぷた前燈籠コンテスト』が開催されるなど、よりいっそう盛り上がりを見せたそうだ。
弘前さくらまつり”第100回”を迎えるはずだった2020年は…
昨年、弘前さくらまつりは記念すべき、第100回目の開催を迎えるはずだった。そんな中、コロナ禍がやってきた。
白戸「予定していたことが半分以上できなくなってしまいました。」
白戸「それでも、コロナの感染予防ポスターの制作だったり、インターネット上で桜ミクと弘前市をイメージしたイラスト募集をするイベントを開催したりしてきました。」
さらに、弘前駅前にあったウェルカムボードのイラストを変えるなど厳しい状況の中でも工夫してきたという。
2021年は規模は縮小したものの、弘前さくらまつりが開催され、市内にコラボフラッグが見られたり、新しいグッズが発売されるなど新たな動きがあった。
さらに、これまでのイベントが好評だったこともあり、”来年度以降もコラボが継続できるように計画し、動いている”とのこと。
現在、弘前コンベンション協会は”何を目的に”、”何に力を入れている”のか?
これまで紹介してきた弘前市と桜ミクのコラボを企画・実行してきた弘前コンベンション協会(弘前フィルムコミッション実行委員会)は現在どのような取り組みを行なっているのか伺った。
白戸「現在は、弘前市には様々な種類のアップルパイを販売しているお店が多いということに着目して、ガイドマップを発行したり、コロナ禍ということで、中々お店に足を運べない方々にも楽しんでもらえるように『弘前アップルパイレシピbook』も企画しました。」
弘前市のアップルパイは華やかな見た目からも主に女性に人気があり、テレビや雑誌にも特集されるほど注目されているほどだ。
白戸「中でも一番力を入れているのは映画『いとみち』ですね。この映画は私が原作を読み、映画にしたいと思ってから実現までに”8年”も要しています。県内で先行上映されましたが、非常に好評だったと聞いています。」
『いとみち』は青森県を舞台とした映画で現在、全国の劇場で公開中である。撮影地をめぐるガイドマップが発行され、映画を見終わった後も楽しめる。
白戸「ただ、我々の仕事はこの映画見ていただいて満足していただくことではないのです。」
白戸「あくまでも、(我々の使命的には)映画を観てもらって、”弘前市に観光しに来てもらわなければ意味が無い”のです。つまり、映画は目的ではなく手段なのです。」
実は、これまでにも、弘前市をロケ地とした映画が公開されてきたが、いずれも映画の内容は満足してもらうことは出来ても、実際に弘前市に足を運んでもらうというところに大きな壁を感じているそうだ。
白戸「今の時代、多少の予算があれば、映画自体は作ることが出来ます。ですが、弘前市に誘致するほどの効果を出すことが非常に難しいです。」
白戸「ただ、以前に行なったアニメのコラボ企画や今回の桜ミクとのコラボは確かな効果を感じています。特に、若者をはじめとした熱狂的なファンが実際に弘前市に足を運んでくれています。」
このように、弘前フィルムコミッション実行委員会では毎年の慣例行事から、イレギュラーなイベントの企画・開催に挑み続けている。今後も、決定的となった”青森県をはじめとした北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録”など、どのような誘致イベントを生み出してゆくのか目が離せない。
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詳しい情報やお問い合わせに関して
グッズが販売されていたり、募集したイラストが飾られている『桜ミクミュージアム』がある”まちなか情報センター”
※桜ミクミュージアムは現在も続いています。(2021年7月現在)
弘前フィルムコミッション実行委員会
公益社団法人 弘前観光コンベンション協会内
青森県弘前市大字下白銀町2-1
TEL.0172-35-3131